この度、東ソー(株)社製の自動HbA1c分析計を導入致しました。高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)を用いた高速・高処理性能を有した自動分析計であり、大きな病院と同じ測定法の機器を使用しております。一般的にHbA1c(NGSP)の基準値は(4.6~6.2%)であり、変動幅が小さいために正確な測定精度が必要とされます。最近では、安価な免疫法(*正確性は±20%、*同時再現性は10%以下)の簡易測定器が広まっておりますが、信頼性に疑問が残ります。一方、HPLC法(*正確性は±0.3~0.6%、*同時再現性は2%以下)であり、精度にはかなりの差があります。例えば、基準上限のHbA1c6.2%である患者さんの検体を測定した場合、HPLC法で測定したデーターは正確性を0.5%としますと、6.17%~6.23%に収まりますが一方、免疫法で測定した場合正確性は±20%ですから、5.0%~7.4%にも及びます。これでは、実際は糖尿病の危険性がある患者さんが、「全く問題ないですよ」と言われる事もあれば、「ほぼ間違いなく糖尿病ですよ」と言われる事も起こりえます。また、東ソー(株)社製の自動HbA1c分析計は、異常ヘモグロビンへの対応もしており、代表的な異常ヘモグロビンの影響を受けずにHbA1cの測定ができ、1検体の分析時間は約2~3分と短時間でHbA1cの測定ができます。
糖尿病の診療を行ううえでHbA1cは、言うまでもなく最も重要な血糖コントロールの指標であります。世界中で糖尿病の患者さんは増加の一途をたどり、アジアにおいては今後15年で約2倍になることが予想されております。糖尿病治療の第一段階の目標は、十分な目標値でコントロールを継続し、血管合併症の発症・進展を抑制することです。近年、糖尿病薬の進歩もあり、脳血管疾患、心血管疾患などの合併症はかなりのレベルで発症・進展を抑える事が可能となりました。しかしながら、最近テレビで放送された、「血糖スパイク」、「血圧サージ」があぶない!といった内容の放送が話題になっている事からも、動脈硬化を抑えるためには一日の血糖・血圧の上下の変動幅ができるだけ小さくなるような良質なコントロールが求められています。
また、糖尿病の患者さんは健常人に対して、発がんリスクや、認知症になるリスクが高いことが知られております。次の段階の糖尿病の患者さんの治療の目標は、認知症や癌になるリスクを軽減し、健康寿命を延ばすことが重要であります。当院でも、みなさまが少しでも健康寿命を延ばす事が出来ますよう、ますます努力としてまいります。
*正確性(認知濃度に対する許容範囲)*同時再現性(変動計数:CV%)